杉原千畝記念館とソラマメのこと
 雪の日のこと
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 杉原千畝ちうね記念館と「ソラマメ」のこと

  岐阜に八百津やおつという町がある。「津」には、船着き場とか川
 湊(かわみなと)という意味があって、八百津町には、町を流
 れる木曽川の流れを利用して、木材などの産物を下流に運ぶた
 めの川湊が多くあったことから、その名前が「津の多い(八百)
 ところ」として、名付けられたものと思われる。
  さて、この八百津町は、かつて、第二次世界大戦下のヨーロ
 ッパにおいて、ナチスからの迫害を逃れようとしたユダヤ難民
 に対して、日本への通過ビザを発給し、多くの命を救った元リ
 トアニア日本領事館領事代理杉原千畝氏の出身地として知られ、
 その記念館がある。
  よく晴れた秋の一日、思い立って八百津町へ向かった。木曽
 川の支流である飛騨川を渡り、国道四一八号を走って八百津の
 町並みを抜ける。左右にまばらになった人家を見ながら山間やまあい
 道をなおも走り、やがてトンネルの手前で「人道の丘公園」の
 標識に従って右折する。ここまで来れば記念館は近い。
  少し早いが昼ごはんにする。目当てにしていた食事の店は、
 記念館のすぐ近くの「ひだまりKitchen Sora-mame」である。
 なんでも、日替わりの惣菜がお代わり自由でいただけるという。
  豪華な料理にはほとんど関心がなく、肩肘を張らず、言って
 みれば食べなれた家庭料理のようなものを食べさせてくれる店
 が何と言ってもうれしい。そんなことから、楽しみにして出か
 けてきたのであった。
  走ってきた八百津の町並みからはかなり標高が高く、道の両
 側は紅葉した落葉樹が秋の光を受けて美しく、車を降りて歩い
 てみたくなるような、そんなところにこのレストランはある。
                       (下へつづく)

    店内はゆったりと広く、温かみのある白木のテーブルとイス
   が心地よく、窓際に飾られたマツボックリがかわいらしい。
    注文したものができる間、温かいスープと目当ての惣菜をい
   だく。味付けが優しい。
    「ソラマメ」というこの店の名前のことを尋ねる。いわく、
   窓の外に広がる芝生の丘と高い空。そして、力強く空に向かっ
   て成長する「そら豆」のように大きく育つことを願って名付け
   たのだとか。
    いただいた料理は、期待以上のものであった。昼に外食をす
   ると「夕ごはんはお茶漬けでいいね」などと、必要以上の満腹
   感を感じてしまうことが多いのだが、今日はそのようなことは
   なく、気づかって軽めにしていただいたご飯と、何よりも料理
   の味付けに工夫がなされているのだろう、「ちょうどいいね」
   とか「ここで落ち着いてしまったね」と冗談が出るほどに心地
   がよいのだ。
    聞けば、窓の外に広がる芝生の丘では、夏に、歌手の夏川り
   みさんや清水ミチコさんを招いて「星空コンサート」が開かれ
   たという。当日の写真を見ながら、さわやかな夜風と満点の星
   空に思いをはせ、またひとしきり話がはずんだ。

  雪の日のこと
    雪が降り続いている。隣家の屋根が白くなった。道路には
   だ積もっていないが、この降り方では夕方から本格的な積雪に
   なるかもしれない。
    向かいの小学校の校庭では、子供たちがサッカーに打ち興じ
   ている。子供は風の子である。
    気にはなっていたが、車のタイヤがまだ夏タイヤのままであ
   る。暖かい日を待って冬タイヤに交換するつもりだったのが間
   に合わなかった。四輪駆動車だから少しはましだが、やはり気
   になる。
    若い頃はスキーに出かけるのが楽しみで、雪の情報が待ち遠
   しかったが、いつの頃からかそれもなくなった。淋しいことで
   ある。 雪は粉雪に変わった。山は大雪になるだろう。

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